Queen Beetle長崎博多間初就航
Covid-19前の構想では、博多釜山間に就航予定であったJR九州高速船のQueen BeetleはCovid-19下の渡航制限に伴い、長らく行き場のない船舶であった。パナマ船籍であったことが災いし、国内航路への就航が出来ず、日本船籍への切り替えが済んだ、2022年3月12日付けで日本船籍となり、4月10日の博多 - 門司港の就航により、国内航路、国内クルーズへの本格投入が開始された。その一環で、西九州新幹線の開業を迎える長崎への航路を拓くこととなった。今回はその上篇として、入港から乗船したのちの船内の様子をお伝えする。
航海の様子はこちらへ。
Queen Beetle 長崎港入港
2022年7月16日、JR九州高速船運航のQueen Beetleは朝 09:30 に博多港を出港し、長崎港へは 12:50 には姿を現した。接岸までの作業に時間を要し、タラップの接続は13:25ころとなり、乗客は30分以上も船内で待たされたこととなる。接岸までものんびりとしたもので、港を行き交う定期船の運用の合間を縫って13:15頃に接岸している。乗降口付近に設置された滑車に接続され、ゆっくりと持ち上げられたタラップがようやく着くまでに時間を要しており、長崎着の便では少しゆっくり船内で待っておいたほうが良いであろう。
今回の就航は西九州新幹線開業を見越して、長崎市周辺を中心とした観光振興を目指しての企画運行である。このため、長崎県の西九州新幹線開業準備実行委員会の主催でお出迎えを行うことが発表されていた。当日のお昼間にもかかわらず、西九州新幹線のシンボルカラー オレンジ色(どのような経緯でこの色になったのかは不明)のポロシャツを纏った一団が入港後に占拠しはじめ、出迎えともとれないタイミングでお役所仕事の歓迎を行っていた。
西九州新幹線開業準備実行委員会は、7/16(土)に水辺の森公園で、長崎に初入港するQUEEN BEETLEへのおもてなしを実施!
— 長崎県新幹線対策課 (@ngs_shinkansen) July 11, 2022
オリジナルグッズなどのプレゼントの他、なんと船内見学も可能です!!
11:30に長崎県庁に集まろう!
申込みはこちら↓↓https://t.co/OpwGMR4cd9#西九州新幹線 #おもてなし長崎 pic.twitter.com/5lezDpbk22
今回、長崎港においては、水辺の森公園の出島岸壁を利用していた。出島岸壁といえば、かつては上海長崎航路(日華航路)の華やかな時代の香りのする言葉であるが、現在では海上保安庁や水産庁の船が停泊する程度である。海面の変化がそこそこ見られる長崎港においては、浮桟橋でないこの岸壁へのタラップ付けはかなり大変そうなのである。
Queen Beetle の船内
Queen Beetleは世界的にも珍しいトリマランの客船で、三つの胴を一つの桁で渡した構造となっており、客室は広くとれ、速度の向上もはかれるという。ヨットなどでよく見られる構造であるが、旋回性などが悪いのか、今回の出港・入港でのプロセスに時間がかかっている。オーストラリアのAustal社製で、JR九州の鉄道車両と同様に、あちこちで定評のある、水戸岡鋭治デザインの船舶である。乗船中に流れていたJR九州高速船の作成のプロモーションビデオからご覧いただこう。
Queen Beetle諸元
- 2020年7月15日就航(予定 Covid-19下で2021年3月20日沖ノ島周遊でデビュー)
- 2020年4月24日進水
- 全長 :83.5m
- 幅 :20.2m
- 最大喫水 :3.6m
- 総トン数 :2582トン
- 航海速力 :36.9ノット
- 旅客定員 :502人
ビジネスクラス客室
航空機のビジネスクラスを意識したビジネスクラス客室である。Queen Beetleでは二階甲板に位置している。スリッパやアメニティがあらかじめセットされており、軽食のサービスは航空機用のギャレーカートで行われるほどの意識の強さである。各座席に充電用のUSBポートが設置されている。
シートは水戸岡デザインの真骨頂とも言える質の悪さである。見栄えを意識しすぎて、リクライニング機能、フットレスト機能はお粗末なレベルで可動性が悪い。モケットの素材が安っぽく、毛羽立ちや生地のチクチクする感覚があり、ウレタンも柔らかすぎて、長時間座っておくには足りないレベルである。就航してそこまで稼働していない状況である中で、以下の写真のようなヘタった座面を見せるのも、チープな印象しかない。JR九州の車両における座席の悪さが踏襲されており、やはり定評ある水戸岡デザインである。
後方に設置されているのはPacific Sleeper1400とよばれる、既製品のシートであり、こちらの方が座り心地はよかった。プライバシーが保たれるとされる分、広大な二階甲板内でやや圧迫感を局所で感じる空間であり、やはりどこかチグハグ感は否めない。
キオスクの中で最も注目を集めていたのは、Bar Higuchiの置き土産とも言える、モスコーミュール用の生姜の壺であろう。その隣に置かれたリカー類のボトルなどは糸島周遊航路で販売されるものであるという。キオスクでは簡易的な料理などもサービスされており、航海中に注文するものもおおくみられた。
スタンダードクラス客室
スタンダード客室は一階甲板に位置しており、船体のスペースを広く生かした作りとなっている。
水戸岡デザインの怪しげなモケットと構造のビジネスクラスのシートからすると、大分マシにも見えてくるのが、既製品に近そうなスタンダードクラスの椅子である。窓が大きくとられており、開放感のある大広間となっており、どこか落ち着かない空間であるが、日韓航路の性質上、このくらいが良いのかもしれない。
収納ロッカー
国際航路への就航としての船舶として設計されたQueen Beetleであるが、今回の航路ではほとんど利用されなかったのが、ロッカー周りの設備であろう。500人を超える乗客の荷物を収納し、自転車まで収納できるようにしているのだ。
ロードバイク文化もちらほら見られる大韓民国でのサイクリングなどというのもCovid-19終焉後には再興してくるのであろうか。韓国国内でも釜山からソウルまで縦断するサイクリンロードが整備されており、そこを走行するものも出てくるのであろう。また、韓国から日本へのロードバイクを持っての渡航なども行われるであろうから、自転車文化を通した交流などというものも今後すすむのかもしれない。韓国内の一般道はバスの天下であるから、自転車などで走るべきものではないことはここに記しておく。。
展望デッキ
三階部分に位置する展望デッキは海の香りや風を楽しめる場所である。ジェットフォイルから見ると半分程度の速度で走行するQueen Beetleだから楽しめる場所として用意したのであろう。
免税店・ブティックスペース
かつてのBeetleでは設置できないような贅沢なスペースのもう一つが、これであろう。A380の就航時には、大韓航空などが設置した免税店スペースである。二階甲板に位置しており、今回の航海中は免税店としてではなく、地元の産品や鉄道グッズを売る場所として機能している。
下篇では、実際の長崎港から博多港までの航海の様子を記す。