佐世保の五島フェリー航路
新たに令和元年に投入されたフェリーいのりは宇久平、小値賀と佐世保を結ぶ航路を、フェリーなみじは有川と佐世保を結ぶ航路を受け持っている。いのりは小値賀に夜間停泊し、日中2往復佐世保と離島を結んでいる。なみじは佐世保に停泊し、日中2往復、有川を結んでいる。
新上五島町のメインの中通島と本土は、一日三便の奈良尾発着の長崎航路と一日二便の有川発着の佐世保航路が結んでおり、長崎市街以外の事業者は佐世保航路を好んで使う。これは上五島を遅く出ても、佐世保からの高速の便がよく、諫早や九州北部方面であれば、なみじを使った方が速達性が高く、船に長く揺られる必要もないことにある。ただし、なみじに搭載できるトラックは数が限られている。
九州商船の船舶の旧塗装が唯一残るフェリーなみじ
かつて長崎福江航路に投入されていたフェリーふくえなどは緑と白を基調とし、赤いファネルが印象的な、田舎じみた、味のある塗装であった。なみじには一等、二等指定、二等など、往時の旅を思わせるクラスが残っている。また、定期航路に投入されているフェリーとしては国内で最も古い船となり、昭和の趣が船内の各所でも見られる。
カーフェリー「フェリーなみじ」
- 全長 :75.10m
- 幅 :13.80m
- 総トン数 :1,150トン
- 航海速力 :16.2ノット
- 旅客定員 :432人
- 車輌搭載能力:トラック6台、乗用車30台
フェリーなみじの船内
フェリーなみじには二等客室、二等指定客室、一等客室の3つの等級が用意されており、二等客室は旅客定員いっぱいまでの収容が可能で、かなりの混雑具合となるが、二等指定客室、一等客室では、基本的なアメニティは同じであるが、収容人数に大きく差がある。フェリーなみじにおいては、高速船の欠航や学校行事などに当たらない限りは混雑することもないため、基本的には二等客室でも十分であろう。二等指定や一等は二等客室より上階にあり、小さく区切られた部屋となるため、家族連れなどでの利用もあり、島民はそれぞれ思い思いの使い方をしているようである。
エントランスホール
二等客室
味も素っ気もないと言ったらそのままなのであるが、昭和の雑魚寝船旅らしいつくりである。荷物は基本的に持ち込みが可能である点は他の九州商船のフェリーと異なるところである。
二等指定客室
Covid-19の影響もあり、出張や旅行の需要が激減していた昨今、筆者は二等指定を指定するようにしている。個室や区画を一人で使わせていただけることが多く、ジェットフォイルや高速船の欠航でも、座るところを探すのにも苦労しないため、好んで利用している。等級別乗船券発券数を言われ、それでも二等指定にするのかと、カウンターでチケット嬢が教えてくれるのであるが。。フェリーなみじの二等指定は8人程度の利用定員となっているようである。
ソファ席と絨毯が用意されており、出港までに巣作りをしておくと良いだろう。このソファ席が案外重宝し、波が荒くない時などはソファ席からぼんやり外を眺めていると、トビウオ(あご)が跳ねていくのを眺めたり、島陰を見て、長崎らしい船旅を楽しめる。
一等客室
今時、一等という等級が船舶や鉄道で残っているのは多くを聞かない。ソファ席のモケットもそうへたってはおらず、利用者が少ないため、綺麗なままである。二等指定客室の隣にあり、一枚だけ写真をとらせてもらった。
トイレのピクトグラムからも、燕尾服にシルクハットという謎の出立(モーニングではないのか)の男性と帽子にゆったりとしたドレスの女性が出迎えてくれる。
佐世保港到着後はボーディングブリッジがつけられるわけではなく、桟橋への横付けで下船となる。