佐世保の古き良きちゃんぽん食堂 天石上海楼
長崎市内で燻っていても、長崎県のちゃんぽん事情はよくわからないままであろうし、何より長崎市内は商業主義的になりすぎた観光ちゃんぽんが蔓延っていて、何とも面白くもないため、ここは市外に出て長崎県全体としての俯瞰をして見たいのである。今回から「長崎県でちゃんぽんをめぐる」とするが、長崎市と共通の通し番号で管理していくこととする。長崎市と長崎県とで一応分けてある。
50年の歴史を持つ天石上海楼は、そろそろ80歳にもなるご夫婦が細々と、でも楽しそうにやられている店である。ちゃんぽんの麺などは個数を決めて入荷されている様で、予め電話を入れておくと良いかもしれない。
訪問したのは連休期でちゃんぽん二人前いただく旨を電話で伝えておいて訪問した。常連さんがやってきていたのか、一人前を出してしまった様で、私の分だけ方針転換とした。歌う曲は必ず前川清というバーのマスターにさらに磨きをかけさせようと、一緒にこの店を訪問し、ちゃんぽんは今回マスターに譲った(少しもらったけれど)。
場所は佐世保重工業(SSK)の裏山であるが、建造ドックに近接しているこの店舗は高台にある。第3ドックと第4ドックの間に位置しており、修繕や建造をするのが見える(最後につけたGoogle Mapで確認してみると良い)。調理場の向こうには佐世保重工業のクレーンや港から見える赤崎岳の裾野が良いパノラマを見せており、佐世保らしい景色である。カウンターに座ると、目の前を忙しく走り回るおじさんの向こうにクレーンの上がり下がりする様が見える。
天石上海楼のちゃんぽんとラーメン
天石上海楼のちゃんぽんは、なんといってもその彩と火の通り(焼きも良い)、スープが良かった。長崎県内のちゃんぽんとして、はじめに紹介するに値するものである。バランスよく、カンボコ、ちくわ、キクラゲ、野菜の緑、人参の彩りがきれいで、ややオレンジがかって見えるスープによく映える。スープは丁寧にとられたトリと豚骨であるが、ここの豚骨スープはラーメンでいただいてもわかるが、なんとも端正な、西九州の代表になれる味であった。長崎市内の目線から行くと、ちゃんぽん麺がかん水の効きが弱いのが不満になるのかもしれない。
野菜が足りないと野菜炒めを頼んでいた。ちゃんぽんの焼きの良さが滲む野菜炒めであった。野菜の火の通りが歯応えも残る程度にしてあり、大変美味である。
天石上海楼のラーメン。このベージュ色のややさらりとするスープは、西九州におけるラーメンの典型的なものである。ストレート麺をこれに泳がし、黒木耳にネギを刻んだもの、チャーシューを載せてあるだけなのである。ネギの香りと木耳の歯触りを麺に絡ませながら、スープがヒタヒタになるチャーシューを摘んでいると幸せになるだろう。
コクとあっさりさのバランスが良いスープは、最近20年の流行の濃厚トンコツなどという訳のわからないトレンドとは一線を画した旨さがある。
店情報
いつまでやるのか、わからないけれど、食べておきたい、懐かしい味である。おそらく失われていくラーメンとちゃんぽんの文化の一端でもある様な気もするから、機会があれば行った方がいいだろう。
- 住所:佐世保市赤崎町54−1
- 電話番号:0956231624
- 支払い:現金のみ
- 営業時間:11時30分ー15時
- アクセス:西肥バス 佐世保駅よりG2, 4, 5, 6, 8, 9にて天石で下車