昭和の香りの残る思案橋横丁で康楽のホンワリを楽しむ
昭和28年(1943年)に創業という、創業77年を迎える店である。思案橋横丁という、思案橋のメインの通りに直角に交わる小路沿いに位置する。思案橋横丁は昔ながらの飲み屋小路の様なところで、ちゃんぽんメインの中華料理屋よこはまや天天有、カレー皿うどんの中華食堂の満福、長崎おじやのひふみ亭、おこぜ専門店の小笠原、長崎おでんの桃若、餃子の雲龍亭本店など多くの店が立ち並び、長崎市内屈指の歴史ある昭和の飲み屋街である(そのうち紹介できる日が来るだろう)。ここに康楽はある。「かんろ」と読む。
現在で3代目になったという福建からの流れを組む家族経営の店である。先代の兪雲登先生は長崎華僑総会でも「日中友好」と長崎における中国のプレゼンス増強に尽力され、長崎上海の航空路を誘致するなど、航空ファンにとっても、別の側面を持つ中華料理屋である。壁に掛けられた中華式の揮毫はどこか大仰で、店の大きさに不釣り合いにも見えるのは、その筋から送られたものなのだろう。
観光シーズン(夏休みやランタンフェスティバルなど)や忙しい時間でもなければ、すぐに入れるのが通常である。フロアにはおかみさん一人、アルバイトの若い青年か古くからいる男性の二人、厨房には二代目ともう一人がいる。一年の大半は忙しくないのだろう、世間話をしながらテレビを見たり、数独をしながら従業員で数字を教えあったりと、まあのんびりとしているのが普通なのである。店内は4つのテーブルにそれぞれ4席ずつがあり、基本的には相席はしていない。また大人数の予約となると、二階席に案内されることがある。23時半までやっていると公にしているが、大抵は21時30分ごろに閉店し、シャッターをおろしているおかみさんを見かけることがあるくらい、まあ、肩の力を抜いたホンワリとした店なのが通常である。
康楽といえばちゃんぽんなどの麺類だと思っている方も多い様であるが、それは今の代に代替わりして、観光客が多く訪れる様になる頃からの話である。それぞれの単品メニューも美味なそうなのだが、一品の量が多くなるため、なかなか頼んでみることができないでいる。
中華料理 康楽のちゃんぽん
康楽のちゃんぽんであるが、器の口の開いた、やや平たい碗に盛られてくる。蛍光ピンクのハンペン(カンボコ)、海鮮、豚肉、ニラ、キャベツ、もやしなどが歯触りがよい大きさと火の通りで載っていて、そこに鶏ガラの出汁の効いたスープが張られている。麺はこれぞちゃんぽん麺という唐灰汁のバリバリ効いている灰色の麺であり、香りと噛みごたえを楽しめる。
福壽と康楽で福建華僑の店でのちゃんぽんの双璧を為すと思っている。彩りにはやや欠けるが、スープのあとを引く感じと麺の煮込み具合が良い、まとまりがあってやさしい感じの福壽と、彩り鮮烈、案外スープはあっさり麺の腰の強いのを楽しめる荒々しい感じの康楽と、やや異なるが、福建華僑の長崎ちゃんぽん像はこれであろう。
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康楽は出前をしていた時代があったという。思案橋の界隈をメインに料理を運んでいたそうなのだが、この餃子の皿とちゃんぽん碗がその名残りであろう。餃子もよく頼む一品であるが、肉汁のたっぷり出てくる、香味野菜の効いた餡と、端正に包まれ、このシワが綺麗な半月の形で、焼き目がパリッとするのがなんとも良い。このタレもまた良い。
中華料理 康楽の店情報
ランタンや夏休み時期には他県からの観光客で溢れかえり、店の前に行列ができることもある中華料理屋である。訪問時には時期を外して拌麺を食べてみて欲しい。
- 住所:長崎市本石灰町2−18
- 電話番号:0958210373
- 営業時間:17:30 - 23:30(営業時間は短縮されることが多い)
- 営業日:不定休、店頭の張り紙により通知、訪問時には電話で問い合わせが必要
- 支払い:現金のみ