味を示す長崎弁
おかみさんは料理屋さんをやっているため、当然、味にはうるさい。盛り付けや刺身と醤油の温度にも細かく指示を出しながら、切り盛りしているのである。細やかな心配りと大胆な心持ちとができるあたりは、どこか長崎のまちっこらしくはないようでもある。また料理屋の方もまん延防止等重点措置の解除に伴って、準備はということらしく、掃除やらで忙しそうであった。
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上記のものを順に紹介していこう。
さびなか/さぶなか
意味: 塩味が薄い 物足りない
インターネット上の各ブログなどにおいては、味が薄いという意味とされているのだが、長崎市内での聞き取りによると、さらに限定されて、塩味が薄いことをさす。甘味や辛味、旨味・コクといった他の味の要素に対しては使用されない。佐世保における用法でも同様であるとされる。さぶなかとする人もいるが、さびなかという方が多い。これもテレビ局によって差があるので、長崎市内の集落ごとの微妙な差異によるものと思われる。大村と伊良林の方はさぶなか、戸町と稲田町ではさびなかとするらしいが、これも家庭による差異がありそうで、両方を覚えておくと良いだろう。
色味が足りないことも、さびなかを使うことがある。物足りないという意味となる。
あじもせせらもなか
意味: 味を少しも感じない
ある時、チェーンの店で紅茶を頼んだ際に、おかみさんの友人が発した言葉であるという。紅茶が薄かったのを表したものであるが、なかなか表現が強く感じられるものであるという。
博多弁にも同様の表現がある。「せせら」は「ちょっと」を意味するとされる。文法的な用法としては特殊で、この「せせらも」の「も」は同類の「も」ではなく、強調の「も」である。
味が薄いとかないというのを見てきたので、今度は、味がきちんとしていることを示すものを紹介する。
しょんどる
意味: (煮物において)味が染みている
長崎においてどこの地方においても食べられるのは魚料理である。各家庭での味付けに違いはあるものの、しっかり身に味の染みていることは大切なのである。
鳥取や新潟においても、同様の染みるとする意味を持つ言葉があり、両方の地方において、「しょむ」(染み込む)として使うことがある。広辞苑には「しゅむ」が記載されているが、古典の用語由来である。