本稿では初めて、宿泊施設について扱ってみようと思う。宿の評価の際には、3Bを重要視するようにしていて、Bed、Breakfast、Bathの、寝床・朝飯・風呂の三点の上に、それぞれのスタッフのサービスが、それぞれの宿泊の違いを際立たせる。特に「こだわりの宿」ではないのだが、滞在を楽しめたものを紹介したい。
アクセス
初めてということで、昭和の香り漂う、古典的な旅館を選んでみた。かね屋別館は壱岐島の東部、芦辺(あしべ)にある。壱岐空港から車で20分ほど、芦辺漁港の埠頭に面した旅館で、窓辺からは、芦辺の港が一望できる。時折、博多港や対馬の厳原港からやってくるフェリーやジェットフォイルが対岸に接岸する様を眺められる。
懐かしの旅館サービス
到着すると、部屋の空調のリモコンと鍵を受け取り、階段を上って、自室へと向かう。テーブルと椅子の置かれた板敷の窓辺に、障子で仕切られた、畳の部屋、ユニットバスとトイレが入り口入ってすぐにある。畳の部屋は8−14畳と広さも色々あるようで、宿泊人数と予算に応じて選べば良いだろう。
毎日の清掃で、茶の葉や茶器は取り替えてくれ、菓子も補充してくれていた。大袋でしか見られなかった、煎餅のような焼き菓子が添えられていて、到着してすぐに茶を煎れ、畳にのんびりと座り込んで、ポリポリとかじりながら、外でも見ていると、幼少の頃の夏休みはこんな宿から海水浴に行ったななどと思い出す。
大浴場やロビー、宴会場(カラオケ付き!)など、昭和なアイテムが一通り揃っている。チェックインの時分に風呂を沸かすらしく、もうすぐ風呂に入れるようになり、今、39度のようですなどと、教えてくれる。
夕方、夕飯を食べに降りている際に床の準備に入ってくれる。
旅館メシ
チェックインの際にその日の夕食の時間と翌朝の朝食の時間を訊かれる。夜は7時半が最終で、朝は8時半が最終らしい。島であるためか、案外夜が早い気もする。
夕食は様々なメニューから選べるようであるが、旅館のプランに入っているものだけをいただく。時折、仲居さんたちが配膳の際に、壱岐の話をしてくれ、こちらもいくつか訊いてみたりとやりとりを交わす。あまり長居はしないことになっているのか、配膳とともにすぐに立ち去る。のんびりとした島の時間が流れていくのが、どこか心地よい。今回の滞在でのメニューは魚介をメインにした、旅館らしい取り合わせで、20年ぶりくらいだったろうか。子供の頃には、大して興味もなかったが、地元の魚やもずく、貝などを楽しめた。
朝食も、いわゆる旅館メシの良いところであった。地元のみりん干しや一夜干しは、新鮮なうちに処理されるのだろう、身離れよく、スッと箸が入る上、やはり美味であった。壱岐の米も美味しく、御櫃で出てくる1−2合ほどをペロリと頂いてしまうほどだった。
周囲の観光スポット
芦辺は特に、これといった観光スポットは乏しいのだが、スポットというより、エリアとして楽しめる。壱岐牛のレストランも対岸の芦辺港にあり、昭和の色の濃い芦辺浦の集落は往時の面影が随所に残る。コロナウイルス感染拡大による自粛の余波で、方々の店は閉じているところが多かったが、景色や自然を楽しむのには良いところである。
一日5本ほど、路線バスも出ており、長期で島の観光をするならば、自転車と組み合わせての移動も良いだろう。一支国博物館や郷ノ浦、勝本方面へはバスで移動することになるだろうが、八幡半島などはのんびりとサイクリングでも楽しめるだろう。島内は案外、車の交通量が多いので、安全への注意・ヘルメット着用などは必要であるが。。。
宿情報
送迎:あり。芦辺港には、宿泊プラン・宿泊者数によっては無料で送迎してくれる。
交通:公共交通はない。タクシーは壱岐空港から20分ほど、3000円弱であった。
住所:〒811-5316 長崎県壱岐市芦辺町諸吉大石触472−12
電話番号:0920-45-0350