五島と長崎を結ぶメインライン
五島と長崎を結ぶ交通路は、離島ということだけあって、海路か空路ということになる。以前紹介した空路に続いて、今回はメインラインの九州商船のフェリーを記事とした。Coivd-19下でも新造フェリーが多く見られる中での、
九州商船フェリー 長崎福江航路 万葉クラス 万葉と椿
カーフェリー「万葉」
- 平成23年4月17日就航 平成23年3月25日竣工
- 全長 :86.50m
- 幅 :14.50m
- 深さ :10.40m
- 最大喫水 :4.55m
- 総トン数 :1,553トン
- 最高速力 :21.029ノット
- 航海速力 :18ノット
- 旅客定員 :482人
- 車輌搭載能力:8トン積トラック18台
カーフェリー「椿」
- 平成24年12月1日就航 平成24年11月10日竣工
- 全長 :86.50m
- 幅 :14.50m
- 深さ :10.40m
- 最大喫水 :4.55m
- 総トン数 :1,599トン
- 最高速力 :20.733ノット
- 航海速力 :18ノット
- 旅客定員 :482人
- 車輌搭載能力 :8トン積トラック18台
万葉については、過去に事故を起こしており、この事故を元に、姉妹船である椿の改良が行われている。就航時より、船舶の専門家の間では、横揺れにおいて、振り戻しの時間がかかることが見られており、船体の復原性に問題が示唆されていた。横揺れでの復原に時間がかかっていたというコメントが出ており、早期の問題解決をというアドバイスがあったという。
2013年11月18日の早朝、就航して半年程度が経った頃に、左舷側に、大きく傾斜し、荷崩れ・乗客の怪我を起こした事故があった。その後、改良工事が施され、椿にも進水前に設計の改良が加えられている。万葉において、船底に重りを50トンほど追加しており、改善が図られている。
https://www.mlit.go.jp/jtsb/ship/rep-acci/2013/MA2013-3-1_2012tk0012.pdf
九州商船 万葉クラスの船内
二等をメインとした船室が用意されており、乗客の総員数は確認されるが、特に指定席として番号が割り振られることはない。二等指定と言っても、ただ人数が少ない空間となり、このCovid-19下で密を避けたい客が一人で一コンパートメントの利用となることもある程度である。基本的に絨毯じきのところで皆が思い思いの格好で過ごす形となる。五島灘が案外揺れることが多く、慣れないものが多く乗っているときなどは阿鼻叫喚の様となることもある。
かつてのフェリー長崎やフェリー福江時代には船尾部分に五島うどんを出す立ち食いうどん屋があったというが、売店もなく、自動販売機のみが置かれている。案内所ホールに菓子、カップ麺、ドリンクの自販機が備えられている。そとうみであるような五島灘に出る前に食事などは済ませておいた方が良いこともある。
長崎から五島への旅
長崎と五島福江の2点を主な発着点とし、奈留島や上五島の奈良尾を経由する便が設定されている。長崎港ターミナルを出発し、長崎港を反転して女神大橋を潜り、五島灘に出る。南北に細長い、二等辺三角形にすっぽり収まるような長崎県の中において、福江とはほとんど東西方向に同じ程度の緯度にあり、この2点を直線で結ぶように直行便の船便は進んでいく。今回は長崎から五島までの様子を振り返りたい。
出港まで
長崎港ターミナルへは大波止の電停からの徒歩かタクシー、市内の観光ルートバスを利用するのが良いだろう。荷物が多い場合にはタクシーの利用が賢明だ。
ターミナルに入り、チケット売り場でチケットを求める。二等船室の混み具合を確認するのを忘れてはいけない。混んでいるようなら、二等指定にアップグレードしておいても良いだろう。また、フェリー便で車両も航送する場合には、車検証を忘れずに手続きに向かう。
手続きが終了したら、車のものは「お車へお戻りください」のアナウンスを待ち、徒歩での乗船のものはそのまま二階へ上がる。長崎が誇る、誰が考えてもバリアフリーとは言えないような素晴らしい搭乗ルートが待っているため、輪行などで大きな荷物を抱えているもの、スーツケースなどが重いものなどは二階の優先搭乗のコーナーにいる係員に一声かけて、そのまま荷物を置かせてもらうと良い。搭乗待合室はさらにそこから一つ階を上がったところになる。
近未来的な搭乗橋を渡ると船内に入る。この際チケットは半券も併せて、終始保管が必要である。荷物の収納が終わったら、あとは船内からの長崎港の様子を眺めるのもよし、係員が出港準備に勤しむのを眺めるのも良いだろうし、好きに過ごすのが良いだろう。
二等船室なら船尾の甲板から最上階の甲板に上がることができる。二等指定なら狭い階段を登っていくと最上階の「展望デッキ」に出られるため、ここから長崎港を進んでいくのを眺めるのも良いだろう。このフェリーの甲板からの眺めは他の船では得られない。
甲板にはベンチも置かれているが、五島灘の風は冬は冷たいため、きちんと着込んでから上がって欲しい。
船首の展望デッキからは長崎港の様子が間近に見られる。長崎造船所の立神ドックや女神大橋、小さな造船所が並ぶ戸町方面など港町であった長崎の様子が見られる。女神大橋をくぐると、右手には神の島がみえ、マリア像や白い神の島教会も見られる。
神の島教会を抜けると、正面に香焼の旧三菱重工長崎造船所の香焼ドックが見られる。大島造船所が引き継ぐことになっており、長崎でも最もホットな話題である。かつて紹介したオリーブベイホテルは大島造船所の迎賓館である。香焼の先は伊王島が見えるが、天候によってはこの辺りから波による船体の揺れが大きくなる。
中通島(なかどおりじま)の島影が見えてきて、椛島(かばしま)を右手に見るようになってくると福江港へ入港となる。長崎港を出港し、伊王島をすぎ、このあたりに入るまでは波やうねりによっては船が大きく揺れることがあるため、この間は横にでもなって、よしなしことを考えてでもいるのが良い。
奈留島まではこのままの乗船となり、朝8時に出ると12時頃の到着となる。奈良尾港には奈留島港の後に到達することとなり、車両航送するものは福江港で一旦、車両の積み直しが行われることもある。
最後に フェリー利用時の注意事項
時化の日
海が時化ると大変なのが五島行きの旅程である。ジェットフォイル便を予約していても、並の高さが5mを超えると欠航となり、フェリー便に振替も可能となる(ジェットフォイル便との差額は返金扱いとなる)。この際がかなり大変な渡航となるため注意が必要である。フェリー便となるが、船室への人数は平常時の倍以上の人数になり、上記の雑魚寝船室が大混雑することとなる。これらは大抵、船に慣れない渡航者が多く、彼らが大きなうねりや波を進むフェリーの旅で平然としていられることはないのである。賢明な読者の皆さまはわかる通りの事態が船内各所で引き起こされることとなる。嵐や風でも起こるため、乗船前日には天気予報でも波浪予報と風の予報をよく見ておくことを勧める。キーワードは「うねり」である。
ドックダイヤ
渡航がドックダイヤに当たると、利便性が著しく低下するため注意が必要である。ドックダイヤはジェットフォイル、フェリーともに存在し、通常の便数の半分の運航となる。特に、車での航送を行う場合には容量が逼迫することもあるため、早めの予約が必要である。長崎五島フェリーについては4月の中旬、10月中旬に設定されることが多く、ジェットフォイルでは1月中旬から2月にかけてなどとなる。