長崎県における敬語表現
長崎県における敬語表現は地域によって、異なる。大きく県北エリア、県央エリア、県南エリアで異なっている。県北エリアで中心的なのは佐世保弁であるが、平戸弁をベースに、西九州から北九州エリアの方言が混在しているため、佐世保弁の話者は案外、福岡県まで行っても、ニュアンスがとれるらしいのである。県央エリアは大村藩領と佐賀鍋島藩領とが元々の土地であり、この鍋島藩領は佐賀の方言に近いとされ、慣れてくると、聞いただけで、どちらの領地の出身かがわかる。狭義の長崎弁が一番難しく、まちっこ(諏訪の氏子のモノもの)の喋り方、辺縁の集落の喋り方などが異なり、これらの差があることは前回の「じげもん」で確認したところである。
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当ブログで扱っている長崎弁の定義
当ブログでの長崎弁は特に断りがない限り、諏訪の氏子エリア(つまりくんちの踊町エリア)のものを指すこととしている。長崎弁とひとまとめにすると長崎県の言葉のように思う方がいるだろうが、それぞれの地域、離島の島々などで言葉が異なっている。長崎なんて言葉を使いたくもないと思う佐世保の人々も一同に県民として扱うのは行政区であるから百歩譲るとして、このブログでは、なるべく、細かく分けて分類し、長崎のことばとして多様な言葉あることを確認していきたい。諏訪の氏子エリアでしゃべられるものを長崎弁として扱い、それ以外の長崎市の集落の喋り方などをわかる範囲で、知りうる範囲で記載していくこととする。
長崎弁における敬語表現
長崎県における敬語表現は地域による特性が大きく出るため、案外ニュアンスを聞き分けるのが難しい。いきなり見知らぬ人に話しかけられて、動詞部分がわからないということが起こるのが長崎県の中でも多く、この表現は県内を行き来するならば、覚えていた方が良さそうである。
長崎弁では「〜nなる」を使い、詰まったnかmを噛ませる。表記では記載しない場合もあるが、やや詰まったように濡れnなったと発音されているようである。佐世保弁では「〜oらす」を使い、特に発話における差異は小さい。諫早弁は、現在形の表記ではシャルとするようであるが、過去形ではシャッタと詰まるように聞こえる。
いらっしゃった
- 長崎弁:きんなった 例)どちらからきんなったとですか?
- 佐世保弁:こらした 例)どちらからこらしたとですか?
- 諫早弁:キンシャ(ッ)タ
丁寧に言っているようであるが必ず「ですか」が付くのが多い。佐世保では「どちらからですか」とさらりと聞くことが多い。
おられた・いらっしゃった
- 長崎弁:おんなった 例)あちらの方(香港)におんなったとですか?
- 佐世保弁:おらした 例)さっきまでおらしたよー。
- 諫早弁:オンシャ(ッ)タ
お濡れになった
- 長崎弁:濡れ(ん)なった 例)雨のひどーて濡れなっとるけん、おしぼりばだしとーとです。
- 佐世保弁:濡れらした 例)傘ばさしても、濡れらしたとねー。ひどかとばいね。
- 諫早弁:濡れんシャ(ッ)タ
このほか、佐世保弁では、「〜よらす」を頻用する。〜してらっしゃると現在している状態についての敬語表現である。長崎弁において、動作者主体の時勢について変化しないが、より細やかに佐世保弁では変化していく。「食べらす」と「食べよらす」ではニュアンスが異なり、前者は召し上がる、後者では召し上がっていると状態の差異を示すことがある。
例)食べよらす 食べてらっしゃる 長崎であると「食べんなっとる」であろうか?
ただし、これは国語教育として、道徳教育としては敬語表現の中でも尊敬語に当たらないとする教員もいるため、あえて敬語表現とまとめた。「先生のこらした」というのは先生が来たという意味なのであるが、標準語における「される」「なさる」も尊敬語表現であるが、「られる」の尊敬語表現の亜型として、感じるものであるらしい。