秋になっても鱧
鱧というのは夏の初めからの魚と思うかたも多いのであろう。案外そうでもなく、漁師さんの網には11月になってもかかることがあるといい、そのあたりの感覚というのは、釣りにも出ないで海は眺めるもので、ただ漫然と魚屋の店頭を眺めているものからすると、よくわからないものである。まだまだ「さしみ」(このひらがなの感じが清花和の場合にしっくりくるのは女将さんの刺身について熱弁をふるう発音や顔が浮かぶためである)でも鱧がちょこんと鎮座する秋である。
毎年のように来襲して鱧を堪能していかれるM氏が、今年はブログにもあるような事態であったため、来崎を9月まで延期されていたのである。
清花和の秋の松茸と鱧づくし
時期も時期であるから、鱧だけというのはどうかということで、今回は松茸との取り合わせのコースとなったのである。Covid-19対策、怪我の功名ともいうのか、おひとりさま用の鍋がセットされ、個人の好みにより寄り添えるスタイルとなっている。
先付け
刺身
奥に配された鱧。スポイトで梅を載せていただく。
椀物
今回は松茸といっしょにというコンセプトで、松茸の香りに加えての鱧の香りとして土瓶蒸しであった。
お凌ぎ
鱧寿司。骨切りした鱧を煮て押し寿司となっている。茗荷の酢漬けもまた風味のバランスが良い
焼き物
鱧のウニバター 杉板のセロファン包 松茸と杉板の香りが一気に広がる
煮物
無花果の鱧包揚げ煮浸し。海苔の香りを纏って、鱧の歯触りと香り、無花果の甘味と出汁の出会いが楽しい
鍋物
鱧しゃぶ。今回はテーマに沿って、松茸も一緒に。
ごはん
シメは小田蒸し。鱧出汁で島原そうめんと鱧、松茸を小田蒸しとして閉じ込めた。
水菓子
水菓子は抹茶のジェラード。餡は銀座からのお土産である。
最後に
思い設けて、1ヶ月ほど。手術も終えられてのM氏であったが、楽しまれたのであろうか。店主とも何度もお会いになっている仲での、和気藹々とした鱧づくしであった。時季によってもことなる鱧の表情のようなものがあるのだが、次は早めの6月あたりなどが良いだろうか?